高卒就職者へのキャリア・アップ教育について その1
ちょっと高知(講演)と長野(講師)の仕事が煮詰まってきたんで、思っていることをまずは文章にしてみたいと思う。それがタイトルの「高校生へ在学中にキャリア・アップという考え方を指導するべきだと思う」である。
まずこの根拠は、以下の753現象にある。
高市早苗・内閣府特命担当相(青少年育成担当)は2007年6月29日、07年版「青少年の現状と施策」(青少年白書)を閣議で報告した。それによると、 03年春に卒業し就職した人の3年以内の離職率は、中卒70.4%、高卒49.3%、大卒35.7%で、「七五三現象」といわれる状態が続いていることを 示している。
僕は高校生にガイダンスしているときに「このクラスの半分は三年以内に仕事を辞めています」と伝えている。当然、辞めないで欲しいという思いを込めているわけだけど、それもどうなんだろうと考えるようになった。転職ビジネスも旺盛である。
データがないみたいだが、仮に5年で調査したらどうなっているんだろう?中卒は全滅、高卒は70%、大卒は40%とかになっている可能性は十分ある。
まあ、確実に言えることは、僕が指導している高校生は圧倒的多数がいずれ転職経験をする。
この大前提に学校は目をつぶっていないか?
終身雇用という幻想を捨てよ―産業構造変化に合った雇用システムに転換をー「日本の雇用制度を考える」研究会 座長NIRA 理事 柳川範之などを読むとを終身雇用(生涯雇用)が神話と化していることがよくわかるが、高校の進路指導の先生は、恐らく終身雇用される、或いはそうあるべきという前提に生徒に指導しているのではないかと思われる。
そもそも、教員に転職、キャリアップという価値観は存在しないし、実際問題経験値がない。
一方、文部科学省の学校基本調査によれば、現在の高校生への業界別求職状況は以下である。
これは僕が実際使っている資料だが、とにかく圧倒的に製造業からの求人が50%近く(真ん中の青)、事務や販売は年々非正規雇用に押されて減少の一途を辿っている。
生徒が魅力を感じる職業像とかけ離れているであろうことは、工業高校を卒業した僕には想像が容易である(製造業とモノ作りが似て非なるものというのが僕の実感。ここはまた書いてみたい)。特に女子の場合はキツイ。
この中から一生涯をかけて働ける会社を見つけろ、という指導はどうなんだろうと思う。「だったらフリーターでもいいからショップの店員になりたい」という生徒がいることは、これまた想像に容易い。
僕は、会社に入れば必ずやりがいがある。「フリーターで自分探しをするよりも、会社に入ってやりがい探しをするべし!」という指導をしている。そして、27歳までに適職にたどり着く足掛かりとして、三年は踏ん張れそうな会社を探そう。
そこでキャリアップという考え方である。もう一つ気になるデータとして、「転職歴は3回目から気になる」という回答が全体の36%と最も多くなっているというリクナビの行った人事担当者へのアンケート結果がある。
僕がタイトルで主張する行動目標はこうなる。
「なんとか三回の転職で、27歳までに自分らしい仕事に就こう」である。
その際の転職市場で自分の商品価値をどこまで高めておけるかに指導の的を絞るべきではないかと思う。リスクはあるが、しかし高い離職率、狭まる職業選択という実情を踏まえればこれが現実的ではないか?
本田由紀さんの『教育の職業的意義』
の主張では、学校がもっと職業的教育をするべきであるということが書かれている。僕も大いに賛同するが、学校がその機能を持つまでに僕は何人の学生と対峙するのだろう?圧倒的に衰弱してしまった企業の人材育成能力の回復を待つまでに何年かかるのだろう?
これは僕が実際聞いた話だが、企業側は「卒業するまでにせめてワード・エクセルぐらいはマスターしてきて欲しい」と言い、学校の先生にそれを伝えたら「そういうことは企業が教えることなんじゃないか」とこう来る。学校と企業が人材育成をなすり合いをしているのだ。
こんなご時世である。残念ながら若者は学校側からも企業側からも適切な指導を乞う機会もないまま、労働市場に放り出され、サイバルしながら自己研鑽で職業人としての価値を上げて行くしかないのである。
そのサバイバル・スキルを僕の一時間半の講義ではなく、高校の三年間かけて教えるべきでなのであると思うのだが。シェアするココロとしては、この一年でメソッドとして固めていきたいと考えている。
ああ、一気に書いてしまった!スッキリだ!!
Today's BGM is
Willy Nelson/American Classic これは前も取り上げたっけ?僕はこの人には疎い。知名度の割に音を知らない人は多いのではないかしら?レオン・ラッセルとのセッションモノのバッタモンDVDを持っていてそれもすこぶる良いので、ちょっと当たりを付けたい人である。そしてこれ。僕のギター・ソロごっごのお供にすっかりなっているトミー・リピューマ制作の好盤。ノラ嬢もゲスト参加していますよ。
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