数カ月前に、天職を英語で言うと「Calling(呼ばれる)」というのだと知り、僕はクルンボルツの「プランド・ハプスタンス・セオリー」に出会った時と同じような、救われたような感動を覚えた。
僕はCallingをこんな感じで考えている。Calling→天職→ずっと続けたい仕事→解けない魔法のスイッチ。
この、うんうんそれそれな感じは、ジグソーパズルでよく似ているけど間違ったピースを無理やり当てはめてたピースに、本当のピースを発見してはめ直した時のようなドンピシャ感だ!
では、今までの間違ったピースとは何だったのか?
「天職」を辞書で引いてみると「天から授かった職業。また、その人の天性に最も合った職業」とある。この天に授けられた職というのは、実はCallingとほぼ同じ発想だと思う。天職という言葉ができた当時の日本の職業観は、かなりCallingな職業観に近かったわけだ。
考えてみれば生まれた家の職業を継ぐことが当たり前だったわけだから、親を選べないように職業も選べなかった時代に、天職という言葉が生まれ、授かりものとしての納得感を得ていたんだろう。
団塊世代の方の話や、『オールウェイズ3丁目の夕日』なんかを観てても、地方から東京に集団就職で上京してくる際に、会社名も聞いたことなく、何をやるのかがさっぱりわからないまま、仕事にありつけた喜びや、まさに都会に呼ばれた感じ(Calling的)で期待に胸を膨らませていたことが覗える。
つい最近まで、日本もCallingな職業観があったということだ。それが現代の日本では、天職や適職は「探し出して発見するもの」とされている。「天職」でググったら、こんなサイトが上位5位を占めている(上3つは広告)。
1.天職の発見方法
2.天職なら◯◯◯◯/天職を見つけよう!
3.天職探し心理学
4.あなたの天職探します!
5.仕事探し!天職Web
いつから日本はCallingという職業観を失ってしまったのか。それは日本が高度成長期を経ていく中で、業種職種が増え「選べる状況」になったことで、「授かり」から「発見」へ変わっていったということだろう。
この変化は「いくら稼いでどう食うか」という生きることに固執した物質的な時代から、「何をしてどのような生き方をするか」という精神的欲求、つまり自己実現の時代にシフトした中で起きた現象だと言えると思う。
今に始まった問題ではないが、僕は「何をして」の部分が強調されていく中で、「自分探し」という随分ややこしい、"納得感の得にくい”問題が起きていると感じている。そしてそれは、社会状況が大きく変化しているにもかかわらず、価値観、或いは成功モデルが、就職氷河期以前の20年前とあんまり変わっていないが故により鮮明に面倒くさくなってきているように感じている。
天職、適職発見のコンセプトは、自己理解と企業理解が浅いから適職に就く(発見する)ことができず、「向いていない」とか「イメージと違った」という理由で仕事を辞めてしまう。天職、適職を発見するためには、適性検査やアセスメントツールを使い、インターンシップで職業理解を深め、学生時代の棚卸をしっかりやらせることが大切。これらをしっかりやれば必ず天職、適職に出会える。
本当かな?
キャリア・カウンセリングというのは、今書いたコンセプトを体系立てて行うお手伝いをして、お仕事に就いてもらい報酬を得る仕事だ。この職業マッチングのビジネス・モデルにまんまとやられ「授かる」ものから「発見する」ものに変わっているという側面もあると思う。
そしてこの「発見する」のが求人票ではなく入社後だったりするから、「やっぱ違う」というミスマッチが入社後に起こる。ここが「授かる」、或いは「呼ばれる」になると、こいつが俺を呼んだのか、よろしくね(まあ、そんな簡単なことではないと思うが)になる。この辺は、内田樹のブログ「仕事力について」を参照してほしい。
僕もキャリア・カウンセラーの端くれとして、上記一連のカウンセリングは行うけど、人生って(キャリアって)足し算じゃないだろうっていつも思う。ちょっとしかしてないのに一気に凄いことになったりしちゃう掛け算だって、引き算だって、わり算だって起る。これらを転機という。
冒頭の登場したクルンボルツの「プランド・ハプスタンス・セオリー」は、僕がキャリア・カウンセリングの理論を学ぶ中で出会った一番納得度の高い理論なんだけど。個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。その偶然を計画的に設計し、自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方。
転機で起こったハプニングをものにして、偶然を必然に変えて行こうぜっていうロックンロールな理論なんですよw。これって「呼ばれる」という偶然を、どう計画的に引き起こすかだと思いませんか?
ということで「プランド・ハプスタンス・セオリー」に沿って、天職に呼ばれ上手になる方法を整理したいた思います。
天職に呼ばれ上手になる5つの方法〜解けない魔法のスイッチの入れ方〜
1.好奇心[Curiosity]…ちょっとヘラヘラとした野次馬根性を持ちなんでもクビを突っ込んでみる。口癖は「なんすかそれ??」
2.持続性[Persistence]…ある種の諦めw。呼ばれちゃったらもうしょうがない。口癖は「もうちょいやってみっか」
3.柔軟性[Flexibility]…こだわりなんか捨てちまえ。これもいいけどそれもいいよね!口癖は「あ、別にいいっすよそれで。」
4.楽観性[Optimism]…今日がダメでも明日はきっといい日になるに違いないと信じてる。口癖は「なんとかなるっしょw」或いは「まいっか」
5.冒険心[Risk Taking]…見る前に跳んじゃう。考えるより行動しよう。口癖は「Don't Think, Feel !」(考えるな、感じるんだ)
僕は今後、若者たちの職業選択の幅がぐっと狭くなっていくんだろうと思ってる。同時にこれをブレイクスルーために起業する若者が出たり、新たな産業が新たな雇用を生むのかもしれないし、これまで若者たちが敬遠していたような、例えば農業や漁業などの仕事に新たな付加価値を見つけて、若者たちがはじめていくのかもしれない。いずれにしろ、今の「発見する」ものという考え方には限界がくる。仕事を「呼ばれるもの」という価値観をネガティブにではなく、ポジティブに広げていきたいと思う。僕自身、今呼ばれてここにいると思ってるしね。
過去に書いたプランド・ハプスタンス・セオリーの記事
●「素敵な偶然」2007年10月29日 (月)
●計画された偶然理論2008年11月14日 (金)
●『こんな時代を生き抜くサバイバル・スキル』 その22009年12月12日 (土)
●『こんな時代を生き抜くサバイバル・スキル』その12009年12月 9日 (水)
●「こんな時代を生き抜く五つのサバイバル・スキル」2009年11月20日 (金)
Today's BGM is
Curtis Mayfield/Curtis
カーティスのインプレッションズ解散後のファースト・ソロにして、自身で立ち上げたレーベル「CURTOM」からのリリース。なんと28歳!カーティスがどんな思いで自身の名前をアルバム名にしたのか?この後に続くアルバムを考えると、その精神的な思想のアウトプットとしての音楽がよりソリッドに研ぎ澄まされていったのには、大きな因果関係があるんじゃないかと考えている。そういった意味ではまだまだインプレッションズ的なアルバムだとも言える過渡期的な作品。この辺りで遡って行くとピンとこなくなっていくパターンの人とも言える。