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2012年4月29日 - 2012年5月5日の1件の記事

2012年5月 3日 (木)

「田奈Pass」という顔の見える相談員の仕組み〜顔の見える相談員じゃなきゃ意味がない〜

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これはぴっかり図書館の一コマ。笑顔で金髪の生徒に話しかけるのは、「田奈Pass」等、外部の就労支援機関と積極的に繋がりを持つために尽力する金澤先生。以下の物語も金澤先生なしには、成し得なかったと思います。

僕は今、横浜パーソナル・サポート・サービス『生活・しごと・わかもの相談室』の出張相談員として、毎週水曜日の午後に神奈川県立田奈高等学校にお邪魔し「田奈Pass」という相談事業を実施しています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。→青春相談室「田奈Pass」

去年の6月からはじまった相談事業ですが、僕自身のキャリアとしては、高等学校内の相談業務、しかも定期性を持つものは初めての体験です。そろそろ1年が経ちますので、振り返りながら、僕が今痛感している「顔の見える相談員じゃなきゃ意味がない」ということについて書いてみたいと思います。

地域若者サポートステーションの「中退者等へのアウトリーチ事業」等で、NPO法人の支援者たちが学校に接近している事例が出始めている中、僕自身は遅ればせながらという思いを持ちつつ、自分がやるからには「意味性の高いイノベーティブなもの」をやりたいという、またいつものようなスケベ根性を持って、この役をお引き受けしました。

まずはじめに思ったことは、生徒にとって僕のいる相談室を特別な場所にしてはいけない、という思いでした。

負のイメージとしては、相談室に行って石井さんに相談して来たら、と先生に促された生徒が「え〜」とドン引きしている姿。そして、相談室に入る前にキョロキョロっとして、入るところを友だちに見られないようにしている姿。もしもこうなったら、この事業は失敗だと考えました。また、そのような状況で、自分の存在価値=パフォーマンスを発揮できるとは思えませんでした。

「導入部分の失敗は致命傷」ということは、若者支援に限らず、様々な支援の現場、或いは人間関係の構築には付き物なわけですが、僕はとりわけ、高校生年代の若者及び、僕が対応してきた層の若者たちは、若かりし僕自身がそうだったように、この導入部分、とりわけ強制力には過敏です。自分の支援スタイルとして、この導入部の演出に対しては、強いポリシーというか、自分なりのスタンスがあるわけです。

父親がひきこもりの息子を僕の前に突き出す、みたいなシチュエーションなんかは最悪なわけですが、この力関係のバリエーションは腐るほどあるわけで。典型的なのは福祉事務所でのワーカーと生保受給者の関係とか。この力関係に、力のある側からではなく、フラットに入り込むところにけっこうな極意があるような気がします。

これを、アウェイである相談機関でどう担保していくかというのは、自分の支援者としてのパフォーマンスにとっては非常に重要なファクターなんですよね。環境整備まで出来てはじめて一人前の支援者じゃないかとか、偉そうなことも考えたりします。僕の周りのリスペクトする支援者はみんなこれができている方々ですね。

そういう意味で、導入部分を失敗しないためには、先生の口から「石井さん」という名前が出た時に、その表情とは関係なしに、生徒の頭の中に僕の顔と同時に“ポジティブな期待感”或いは"ちょっとした好奇心”が浮かぶことが、僕のパフォーマンスを最大限に発揮するためには重要なポイントになるわけです。ていうか、その時点で勝ちなんです。

ここでひとつ、大変重要なポイントを忘れていました。先生が生徒の相談ツールとして「田奈Pass」をポケットに入れておいてくれなければ、先生の口から「石井さん」は出て来ないということです。この辺の先生方への浸透度=信頼関係の構築は、担当の先生の努力及び、トップ(校長)を含めたしっかりとした体制がなければ出来なかったことだと思います。ここも随分時間をかけた点です。

しかし、「田奈Pass」のイノベーティブ性は、教師の口から「田奈Pass」や「石井さん」という言葉が出てこなくても、生徒が「田奈Pass」や「石井さん」に、図書館に行けば出会ってしまうという、先生のリファーよりも先に生徒に出会えてしまう仕組みがあったということです。担当の先生側からのプッシュと、僕ら側のからのプッシュが存在していたということです。

次に、そこに行くことが恥ずかしいことではなくなるという仕掛けが必要です。今回の「田奈Pass」が成功したのは、ここの仕掛けに"なんの用事がなくても居られる場所"である図書館を利用したことです(それを快諾してくれたイノベーティブな司書さんの存在が大きい!しかもロック好き!!)。信頼関係を構築しやすい図書館というオープンな場から、進路相談室というクローズな場を上手に使い分けていくことで、導入の課題を解決できているように思います。

そして、心がけていることはディープさの排除。「本当に困ったときには絶対私たちのところに来て」なんて、重たいことはぜったい言いません。本当に困った人が行く場所ではなく、音楽談義をしたり、恋愛相談にも乗っているという事実が、生徒にとって大きなカムフラージュになっているということも大きいのではないでしょうか。

もちろん、図書館の中に外部のおっちゃんが自然にいることへの試行錯誤はけっこう大変でした。何をしていても不自然な状態が続きましたから…(;´Д`)イバショガネエヨ。以下の11、12なんかは、司書さんのアドバイスもあり、やったことですが、ほんと良かったと思います。

そんな中、なんとか定着を果たせたのには、オフィシャルにアンオフィシャルに以下のようなことがあったからだと思います。第二第三の「田奈Pass」ができるために、ランダムにですがシェアしたいと思います。

1.全クラスに相談員2名のカジュアルなプロフィールを貼りだした(まるで使命手配写真のようw)。
2.教員の朝礼に出席し、先生方に顔を知ってもらう時間を作った。
3.教員を対象とした校内研修の講師を務めた(これは随分時間が経ってから)。
4.文化祭に出て歌ったw。
5.図書館が暇な時間は積極的に校内を歩いた。
6.担当教師や校長とよく飲んだ。
7.忘年会に出席した。
8.1年生の全クラス20分ずつ自己紹介と印象的なワークショップを実施した(24年度)。
9.毎週月曜に校内放送(ロック入門講座)を担当した(来週の月曜からスタート!)。
10.お昼ご飯を司書室に食べに来る生徒と一緒に食べてた。
11.本の貸出返却を覚え、(まるでバーテンダーのように)カウンター内で業務をした。
12.無闇に図書室で声かけ等はせずに、司書室でくつろぐようにした。

こんなところでしょうか。飲みニケーションは多かったなあ…w。これらの成果により信頼を獲得できたわけですが(できていない方がいるだろうことも踏まえつつ)、その信頼によりできるようになったことがあります。それが一番の収穫でしょう。さて、なんだと思いますか?

何もしてなくても大丈夫になったんですw。

これ、実はすごい大事なことなんですよ。一生懸命、先生方の視線を気にしながら仕事しちゃったら、生徒たちの信頼を損なうわけです。初期的にはこの状態でしたね。「石井さんがああ見えて仕事をしてる」と思わせてからは楽です(笑)。

僕ら外部相談員で、学校に入り込めてる支援者って、なんだかんだまだまだ極一部なわけです。1年やって今思っていることは、そんな僕らのミッションは何かということです。

僕らのミッションは3年間では終わらない。卒業後も引き続き支援を継続していく、教育と支援機関の橋渡しなんです。このブログで何度も書いているように、18歳で進路未決定で卒業して、支援機関に現れるのが27〜28歳。この「失われた10年」を取り戻すには本人的にも社会的にも負担がかかりすぎる。これを作らないというのは僕らのミッションだと考えています。

でもって、年が若いと、施設や機関の名前では行かないんですよね。信頼のおける知ってる人のところに彼らは行くんです。ハローワークにはそういう人が居ないから若い人は行かないわけです。

ですので、僕ら外部相談員は、顔を知ってもらってナンボだということなんです
。今、田奈高校を卒業した生徒数名と相談を継続していますが、恐らく『生活・しごと・わかもの相談室』を利用しているという意識は低いと思います。みんな僕という顔の知っている人に相談しているという感覚でしょう。それがなければ繋がらない、が、彼らの世代感なのです。

そして、相談できる人を僕という「点」から、わかもの相談室という「面」に増やしていく作業をする。この営みの繰り返しが、セ−フティネットという網があるとしたら、目を細かくしていき、捕捉率を上げていくことなんだと思います。

Today's BGM is
The Rolling Stones/Some Girls - Live In Texas '78
Trs_somegirls_live_cd大好きなストーンズのライブDVD「Let's Spend The Night Together」というのがあって、あれの2〜3年前の秘蔵ライブ。アリーナクラスのライブで、ストーンズ的には相当狭い箱。ニューアルバム『Some Girls』の曲も多く、メンバーは興奮状態の中で緊張感を保ち、なかなかのプレイをしている。個人的にはミックのアクションに今さらながら自然児的な魅力を感じたなあ。ストーンズ離れしている大人たちにオススメですよ。ちなみにこれもロッキン司書さんが貸してくれた一品w

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