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2012年1月8日 - 2012年1月14日の2件の記事

2012年1月11日 (水)

戸塚ヨットスクールという宿泊型支援施設になぜニーズがあるのか?

はじめに。このブログは、度々起きている戸塚ヨットスクールでの利用者の自殺により、ひきこもりやニートの若者の宿泊型支援、或いは若者の自立支援そのものへの批判や、否定のような流れが出てしまうことは避けてほしいと思い、このようなブログを書かせていただきました。ただ、ここまで連続して起こると、世間も戸塚ヨットスクールと他の支援団体を同一視しているとも思えないのですが、広い意味で同じ自立支援をする者として、自分の考えを整理する意味でも書かせていただきます。

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高校デビューとか、大学デビューとか、これまでのキャラを一回捨て、新しいキャラに生まれ変わるきっかけって、何度かあったりしますよね。

就職や転職だって、そういうそういう意味では心機一転のデビューです。僕自身、引越しを繰り返してた若い頃、自分のことを誰も知らない町に住む、しがらみのない自由さは、これからなんでもできるんじゃないかという希望だったりしたものです。

誰もがそうやって、古い殻を破り、新しい自分になりながら、マイナーチェンジを繰り返し今の自分になっているんだと思います。それが成長なんだと思います。

そう考えたとき。ひきこもりの若者は、一度もデビューができなかった、新しい自分になれなかった人と言えるのではないでしょうか。

高校や大学にはもう行かない(行けない)でしょうし、ちょっと就職するのも難しそうな彼らは、一度もデビューすることもなく、その機会すら失ってしまった人たちだといえます。

このリセットできない苦しみをどうすればいいのでしょう。この“やり直しの機会”を提供するのが、宿泊型支援を行う者の使命なのです。

ドツボにはまって身動き取れなくなった硬直した家の空気。

地元の連中に会うぐらいなら死にたい。

彼らは、端から見たらなんで??と思うぐらい、広い世界の中のめちゃくちゃ狭い範囲で苦しんでいます。もしも、この狭い範囲を超え、自分のことを誰も知らない地域で、はじめからやり直すことができたら、どれだけ楽になれるだろう。

家を出る相当な恐怖と、はじめからやり直せるリセットを天秤にかけたら、きっとほんの少しリセットが重いんだと思う。

そんなことを願っているひきこもりの若者はきっと多いはずです。そこに希望があるから、彼らは家を出る。その希望の光を感じさせる。そんな支援を支援者たちはしています。

家庭訪問し、家から出た若者が素早く車に乗り込み、さっとうずくまった。車が走り出す。どうしたんだろうと見ていたら、大きな河を越えた途端にむくりと起きて、見知らぬ町の景色をずっと眺めていたひきこもりの若者がいました。

彼は、地元の友人に見られるのが嫌でうずくまっていたようです。そして、自分のことを誰も知らない町に着き、自立への道を歩み始めました。

殺したいぐらいを親を憎んでいるひきこもりの若者もいます。同じ屋根の下で、同じ空気を吸い、同じ水を飲んでいるというだけでも、怒りが込み上げてくるような日々…。

ある若者が部屋から出て来て、親の前に座った時の睨み殺すような眼差しを、僕は今でも覚えています。保護者の方に退席してもらった途端、彼の顔から悪魔が退散したのかと思うほど、柔和な表情になり、家を出る準備がしたいから3ヶ月待ってほしいと彼は言いました。

3ヶ月後、彼は家を出て、やはり自分のことを誰も知らない町で、自立に向かい歩き出しました。

環境を変えるというのは、非常に有効な支援方法であることは間違いないと思います。個人的には、サポステのような通所型支援よりも、数倍速く宿泊型でまっとうな支援を受ければ自立できると言い切れます。しかし、宿泊型支援には環境を変える際や、24時間付き合う中で、大きなリスクも伴いますし、保護者に多大なコストがかかるのも事実です。

9日、戸塚ヨットスクールでまたも悲しい自殺が起きました。僕はリスクはつきものとして、擁護するつもりはありません。起きていい自殺などないのです。ただ、このような負のニュースが、上記したひきこもりの若者が自立する可能性を打ち消すようなことにはなってほしくないと思っているのです。

宿泊型支援への批判は主に以下の3点だと思われます。

1.家からの出る際、本人との合意形成を無視した一方的な連れ出し。
2.施設内でのカリキュラムや管理体制の在り方。
3.高額な利用料云々。

1.に関しては、NPO法人「育て上げ」ネットの『家庭訪問士養成講座』等、対応スキルの標準化が進んでいるし、支援者のモラルとスキルは相当高まっていると思います。

ただ、合意形成と書きましたが、上記したような家庭内での合意形成というのは非常にデリケートな問題で、「イヤよイヤよも好きのうち」的な一番標準化しにくい部分ですし、ここを見誤ると、大きな事故にもつながります。だから行政支援が踏み込めない領域になっているわけですが、誰かが背中を押してあげなければ出てこれないのが、ひきこもりの若者です。

よく、親が「無理やり連れて来ました」と息子さんを相談に連れてくるケースがありますが、大の大人が本気で嫌がったら、三人がかりでも動かすことは容易ではありません。

3.に関しては、僕の知る限り批判は聞くけど大きな問題は起きていないように思います。個人的には、仕事に就けない子どもが一人暮らしをはじめ、その生活費の全て(家賃・食費・光熱費)と、第三者の支援を受ける費用(塾や予備校に行っていることと同じ)を考え、その団体が提示している額が正当化どうかを判断すればいいのではないかと思っています。

また、ここは「NPO法人がお金を取るの?」的な、文化構造のようなものも影響している議論なのではないでしょうか。けっして安いとは思わないし、誰もが受けられる支援ではないので、公的資金が投入されたサービスが求められていると思います。まあ、それが若者自立塾だったわけですが、残念ながら仕分けられてしまいました。新たなスキームで公的な宿泊型支援が行われることを僕は望みます。

「なんで戸塚ヨットスクールに親は入れたんだ」という書き込みをネット上で多く見ましたが、そういうニーズ(スパルタ教育で叩き直してほしいではなく、子どもに環境を変えてやり直しの機会を提供したい、というニーズなんじゃないかと考えています)はあるということを考えるべきだと思います。

そして、問題は2ではないでしょうか。ここはどうしてもブラックボックス化してしまいがちです。業界内での内部規定のようなものを作る動きも過去にはありましたが、機能はしていません。個人的には、サービスも会計も透明化された団体に寄付(評価)が集まり、それがサービスの向上(若者の自立)につながるポジティブな連鎖を作っていくことが大事だと思います。NPO法人への寄附控除や認定NPOの流れなどは、このようなことに寄与するべきムーブメントだと捉えています。

長くなりましたが、最後に、第一発見者になってしまった施設職員の方や、同様の経験を持つ仲間たちについて、何かできないかと考えています。まるで心のケアがされていないと思います。PTSD的なスタッフもいらっしゃいます。業界全体の成熟を考えた場合、このようなことも重要であり、考える機会としていくべきなのではないかと思います。

株式会社シェアするココロ
代表取締役社長 石井正宏

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2012年1月 8日 (日)

主訴を疑え!〜裏主訴にアプローチするにはラポール形成〜

間近に控えたPS養成講座のテキストを作成しながらメモっていたら、勝手に盛り上がってブログになりました。1月22日の行われるPS養成講座の僕のパートの予告編として、或いは補足としてお読み下さい。
※PS養成講座は現在、参加者が定員を満たしたため申し込みを受け付けておりません。
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ラーメン屋に入って牛丼を注文する人はいない。

しかし、腹が減って死にそうなとき、本当は牛丼が食べたいのに周囲にはラーメン屋しかなく、しかたなくラーメンを食べたことはないだろうか?

若者が就労支援機関を訪れるのも、実はこの「しかたなく」に似ているんじゃないかと思う。

本当は彼女ができないことや、親の無理解や、死にたいことなんかを相談したいのに、そこに掲げられた看板が「就労支援屋」だから、仕方なしに「なかなか仕事が決まらないんです」と言っている。

ここで私たち支援スタッフに、「ああそうですか、では、まずあなたの強みが何かを知ることから始めましょう」と笑顔で言われる。

これに似たようなことがいたるところで起きてやしないか?

食べたくないラーメン、しかも本当は腹なんか減ってないのに「大盛りは無料ですけどどうします?」とドヤ顔で言われているようなものではないか。

「主訴」という言葉がある。相談者が主に訴えかけたい話で、相談のコアな部分のことである。上記で示したことから言えば、「なかなか仕事が決まらないんです」は、実はこの人の主訴ではない可能性がある。

私たちは主訴の裏側に潜む、本当の主訴をコミュニケーションの中から探り出し、コアな課題を解決していかなければ、表面的な「なかなか仕事が決まらないんです」を解決することはできないのだ。ここでは、それを裏メニューに擬え、裏主訴と呼ぶことにしよう。

裏主訴の副作用として主訴が生じている。わかりやすいかわかりにくいか微妙だが、僕はそんな風に感じている。そして、その裏主訴であるコアな課題を相談者と「真の問題点はここだよね」という合意形成できなければ、その裏主訴にアプローチすることはできない。

相談者との話しの中で「ひょっとすると◯◯さんの、本当の課題はそこにあるのかもしれませんね」と言ったときにヒットしたときの濃密な関係性は、経験者ならわかると思う。これ、実は裏メニューにある牛丼がパッと出された瞬間の感動であり、これこそ心の中で、真のドヤ顔でガッツポーズの瞬間だろう。

しかし、こんな場面は経験ないだろうか。

「なんで仕事の相談に来ているのに、生育歴や親との関係を話さなければならないんでしょうか?そんなこと関係ありますか!?(怒)」

「なんであんたにそんなこと言われなきゃならないんだよ!(怒)」

これは僕の若い頃の失敗談です(苦笑)。ラポール形成=信頼関係構築が疎かなうちに、その方の課題を明確に感じ取ってしまい、一目散にその課題にアプローチしてしまったんです。

裏主訴というのは、実は多くの相談者が気づいていなかったり、触れてほしくない、或いは触れられることが怖いと思っていたりします。ここにどうアプローチしていけるか、即ちラポール形成していけるかが、僕らの“腕”だと言えると思います。

僕は宿泊型の支援を長く経験してきました。このラポール形成がオン・オフタイムで出来上がってるとある種のオカンと息子というか、家族的関係にまでなるんですよね。僕は今、それをブース内でどう築くかを考えながら、相談を受けています。

残念ながら、この関係性は傾聴だけでは築くことができない。二度と来なくならない程度のぶつかり合いとか、こちらの自己開示、言葉遣いや服装、話題のチョイス、さまざまなスキルが総動員されて築きあげられている。

ちょっと、そんな話を60分という短い時間ですが、今度の『PS養成講座』では理論的に話してみたいと思う。

最後に、就労支援の看板を掲げざるえないのは、委託事業として厚労省の労働政策として予算が付いているからという根本的なことがある。そこで今、横浜では内閣府経由の委託事業として『生活・しごと・わかもの相談室』と“生活”が入れ込めている。僕はこのネーミング(看板)により、サポステとは違う層の相談が来てるんじゃないかと強く思っているんですよね。どうなんだろ?

Today's BGM is
The Rolling Stones/Stripped
414z8b94nzl久しぶりにわりかし今のストーンズをちゃんと聴いた一日だった。今のストーンズ、かっこ良くないですか?なんだろ、ミックとキースの距離感がかっこ良くなって、よりチャーリーとロニーが惹き立つというか。元々てらいがない人たちだけど、さらになくなったよね。僕はまだスコッセッシの『Shine A Light』を観ていないんだけど、凄い観たい。観るからにはDVDが欲しい。


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