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2012年6月10日 - 2012年6月16日の1件の記事

2012年6月10日 (日)

「防衛的先送り」をする大学生たち

このブログでも何度かお伝えしてきた、シェアするココロが厚労省から受託し実施した、2156人の首都圏を中心とした、比較的上位に位置する大学生が対象となった「QOUL|大学生の生活満足度調査」の結果が、以下のように出ました。まだまだAO入試者やバイト未経験者の孤立感など気になるデータもありますが、今日はタイトルの「防衛的先送り」について、以下のデータから考えてみたことを相当長くなりそうですが書いてみたいと思います。

①大学生の75%は大学生活に満足してる。(現状の満足度)
②しかし、大学生の55%は、将来ニートになる不安を抱えている。(未来への不安度)
③しかし、キャリア支援センターもほとんど学生は積極的に活用していない(55%非利用。就活開始後の積極的利用は9%に留まる)
④そして、大学生が教職員に相談することもなくほとんどない(相談する人として教員は5%。友人知人が89%)

今から書くことは報告書に書くには間に合いませんでしたし、まだ、そのような公な場で公表するほどに科学的な根拠があるわけでも、とろり煮詰まった理論でもありません。しかし、この前、僕が神奈川大学で行った授業に集まった150名の学生のアンケート結果からは、一定程度以上の納得感を得られたように思いますので、弱火にかけながらコトコトと書かいてみたいと思います。

僕が今回頭を悩ませてしまったこと。いや、なんとなくはピンと来たけど、咀嚼して飲み込むのに時間がかかってしまった飲み込みづらさは、大学生の「現状の満足度」と「未来への不安度」の相関関係の崩れ、あるいは歪みのようなものです。

人は現状に満足しているとき、未来もこの調子で満足に暮らせるだろうと、思うと思うのです。この"思うと思う"という言い回し。いろいろ調べ、考えているうちに、なんだかよくわからなくなってきてしまったのですよね(苦笑)。

よくわからなくなった理由は、古市憲寿さんが『絶望の国の幸福な若者たち』で言っている、「20代の若者の70%以上は現在を幸福だと感じている」という、「え!?ほんとなの?」と思わせるデータの根拠となっている、図1の内閣府の『国民生活に関する世論調査』と、古市憲寿さんの仮説に隔たりがあるからです。

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図1(平成23年度内閣府「国民生活に関する世論調査」)

古市さんは、「今日より明日がよくならない」と考えるとき、人は「今が幸せと答える」のである。と言っている。なるほどなと、この本を読んで思っていた。QOULでは75%の若者が現在の在学生活を満足していると答えていることが僕には意外だったんだけど、コンサマトリー=自己充足的という考え方を知り、ああそれかあと納得していた。

そうすると、②大学生の55%は将来ニートになる不安を抱えているから、今を充足させるために満足度が高くなる、という①と②の関係に整合性が持てる。

しかし、下の図2の内閣府同調査の「今後の見通し」では、20代の80%以上が、今後の生活の見通しを明るいと答えている。ここで古市さんの仮説にズレが生じている。今の満足度が高いのは、「今日より明日がよくならないと考える」わけではないということになる。

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図2(平成23年度内閣府「国民生活に関する世論調査」)

僕はこれで混乱した。だけど、大学生へのアンケート調査では、古市さんのいうコンサマトリー的な結果になった。20代とはいえ20歳と29歳では全然違う、学生と社会人の違いと僕は整理しています。その相違点は、大学生には就活を経て卒業という"タイムリミット”がある。僕らの業界的な言い方をすれば、「教育と就労の最後の接続がここにある」ことだと思います。

これも古市さんの本からの引用になりますが、「高齢者が若い人よりも"今の生活”に満足しているというのは、いっけんおかしな話だ。高齢者はもう、"今よりもずっと幸せになる将来”を想定できない。だから彼らは"今の生活”に満足していると答えるしかないのだ」。

実はこれも、内閣府調査の図2を見ると、高齢者も未来を明るく捉えてて、またまた隔たりがあるんだけどw、とりあえず僕はこれを支持して話を進めたいと思うw。まあまあ、最後まで聞いてください(汗)。

なんかこの辺ギクシャクするんだよなあ(苦笑)。このギクシャク感を埋める深掘りしたデータを今後のQOULで収集していけるように反映したいと考えていますので、ツッコミ大歓迎です!

僕の中で残酷に写っているのが、大学生のタイムリミットである「卒業」と、高齢者のタイムリミットである「死」が、仮説の中で同義語として重なること。そしてこれが、大学生の自殺の問題に少なからず続いていくのだろうということ。この件に関しては、改めて書いてみたいと思います。

①と②の満足度と不安の崩れを俯瞰で見ながら、大学生は過酷な労働市場の現実を前に、最後の牧歌的な人生の一コマである大学生活を必死に謳歌しようとしているんだろうと思う。しかし、過酷な労働市場の現実を前に、どうやら問題解決行動を起こせていないように思うのが③④の結果であり、僕の言いたい「防衛的先送り」ということになるのです。

55%の大学生がニートになる不安を抱えている。ニートになる不安というのは、無業状態=就活の失敗、あるいは早期離職後のドロップアウトをする可能性を憂いでいる=自身の職業人生=キャリアについて不安をもっているわけです。

普通に考えて、キャリアの不安があるなら「キャリア支援センター」に行って相談するという解決行動を起こすことを考えるのではないかと思いますが、③しかし、キャリア支援センターもほとんど学生は積極的に活用していない。④そして、大学生が教職員に相談することもほとんどない。このことを大学関係者はどう受け止め、私たちはどう考えるべきなのか?

まず、思い浮かぶのはニーズのないサービスを大学が提供している=現在の大学生ニーズを把握できていないということです。このことは相談員であるキャリコンを増員すれば進路未決定者が減るという戦略が通用しないことを物語っています。また、厚労省が決定したハローワーク職員500名を大学に送り込む作戦も、弊社のアンケート結果をもとに考えれば失敗する可能性が高いということです。

窓口に現れない学生をどうするかが問題なのに、窓口対応の強化を図ることに人員=予算が割かれていくのは理にかなっていないように思います。まずすべきは、窓口に呼び込む導線をどう作るかであって、窓口に来ない学生にどのように情報提供をし、窓口以外で同様の効果をあげるには何があるべきかを考えるべきでしょう。

また、④については、「微弱なSOSをキャッチせよ!」にも書かせてもらいましたが、学生の不安をキャッチする体制ができていないことを物語っていると思います。

ただ、ここについて、静岡県立大学の津富先生が弊社を訪れた時に、マンモス大学の特有的な現象ではないかとおっしゃってて。津富先生は、ゼミに現れなければその場で電話するとのこと。先生のゼミは6名とか言ってたかな。この辺、学生数÷教員数で学生と教員の距離を図る指標が出せるのではないかと考えています。

とにかく、大学と学生の間にアンマッチがある。僕が今回のこの調査を行いたいと思った初期的な衝動は、この大学が把握できていない第三の若者(ニートでも引きこもりでも中退者でもない新たな若者像)が、学内で孤立、或いは大学に見切りをつけて中退しているという実感値をどうにか把握し、なんらかの支援策を講じれないかと考えたことがきっかけでした。

さて、ここまで書くだけでヘトヘトですがここからが本題です。QOULにより見えてきた、大学生の傾向を図式化すると以下のようになると思います。僕はこれを「防衛的先送り」と呼び、これを解決する仕組みを、この図をベースに検討しています。

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図3

これをただの「先送り」と呼ばずに「防衛的」と付けている理由は、私たちがこれまで一度も経験したことのないような人口減少や経済の衰退の前で、なんのお手本もなく何が正解で何が不正解か?答えを導き出そうとしてる経済評論家や社会学者、政治家だって頭を抱えているなか、社会に飛び出そうとして大学生は大きな不安を抱えているわけです。

彼らの75%が大学生活に満足していると答えているけど、彼らは全然ノー天気なわけじゃない。相当しんどい。しんどさに耐え切れず自らの命を断つ者さえいるわけです。この問題を突き詰めて考えれば考えるほど、「イマドキの若者は〜」で片付けちゃあいけないなあと思うのです。

ちょっと臭いものに蓋をする感じはよ〜くわかる。臭いを嗅いじゃったら意識がぶっ飛ぶような恐怖があるんだと思う。そういった意味では私たちだって、将来の心配事やなんやらを先送りをしていると思います。しかし、私たちと大学生の違いは先述した通り先送りし続けることができないタイムリミットがあるのです。

この逃げ切ることのできない不安感は、(もちろん全部の大学生ではありませんが)直に接しながらも実感するところですし、微弱どころか、強いエネルギーを使って発信していると思うんです。余裕のない大人たちが自分のことが精一杯でそれをキャッチすることができないんじゃないかなって感じます。自らの命、または精神を守る「防衛」のための「先送り」。面倒くさいからやらないんじゃないという先送りのメンタリティに注目しないと支援は成立しないと思います。

ここで、以下のアンケート結果を紹介します。大学生活で重点を置いているのが友だちや恋人、趣味という、コンサマトリー的な傾向が見て取れる結果だと思います。また、大学生が最も不安視している将来に備えた就職のための準備が14%と少ないのも、キャリアセンターをほとんど活用していないということと併せて特徴的だと思います。私たちはこれらを不安感や危機感が、解決行動に繋がっていかない先送りの特徴と見ています。

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図4

解決行動に繋がらないので、漠然とした不安はいつまでも漠然とそこに留まり、失くなりません。この不安を封じ込めるように、自己充足的に交友関係に重点を置いていくのは自然な流れのようにも感じます。ここ、僕は連帯してなんとかこぼれ落ちないように凌いでいると見ています。非常に主観的なストーリー立てかもしれませんが、そう見ていくと無意識に発しているSOSがここにあるように思うのです。

『友だち地獄〜「空気を読む」世代のサバイバル〜』という本があり、この本の中で、相手を傷つけず自分も傷つかない「優しい関係」というものが取り上げられています。傷つければその場から排除されるという、過度な緊張状態のなかでかろうじて交友関係の均衡を保っているというものです。

QOULのアンケートに、このことにスポットを当てる質問はなかったのですが、以下のアンケートで私はこんなことを感じています。

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図5

大学内で孤立していると感じますか?という質問に「どちらとも言えない」と答えた21%の大学生たちは、優しい関係の可視化された空気のなかで、かろうじて交友関係の中に属しているのではないでしょうか?ここで、もう一度古市さんの本から、「ないと不幸なものの第一位が友だち」だという理由を引用させていただきます(これも何かの引用だったような気がします)。

「ブスは化粧で化けられるし、仕事がなくても不景気でごまかせるけど、友だちがいないは言い訳ができない。幼少期から形成された全人格を否定されたように思ってしまう。恋人がいないは笑って話せるけど、友だちがいないは笑って話せない。」

ある層の大学生たちは、ディープな話題を避け、表面的な付き合いをしているようです。ヒアリング結果からは、先に挙げた相談相手の89%の友人知人は大学内ではなく、地元の中高一緒だった友人だったり、ヒアリングをした弊社スタッフに「こんなに自分の話を聴いてくれて嬉しかった」「自分のことをここまで話したのははじめてだ」という感想をいただいていたそうです。

これは、漠然とした不安を明確な不安に変え、更にはどのように解決していくべきかの作戦会議ができていない現れなのではないかと思います。そして、この作戦会議には専門家や大人が助言を加えるべき内容もあるはずだと思います。或いはお節介だとか"ちょっかい”でもいいのですが、若者はもっと多様な価値観と接点をもつべきだと思うのです。しかし、どうやらそこが繋がっていないことも気になります。

また、図5の孤立をとても感じる、やや感じるを合わせると18%にのぼる点もしっかり考えるべき結果だと思います。288万人いる大学生を考えればおよそ20万人の大学生は大学内で孤立していると推計されます。

このような「防衛的先送り」という状態に陥っている大学生に対して、「漠然とした不安」を「明確な不安」に変え、解決行動に移すためのトータルな意思決定のサポートが必要だと思います。そしてこの不安を希望に変える場所こそが大学であり、大学の社会的責任なのではないでしょうか?それを果たすためには以下のような取り組が必要なのではないかと考えています。

1.就職やキャリアだけを切り口にしない、より福祉的なサポート体制が必要である。
⇛大学内サポステやパーソナル・サポート・サービスのようなフラットな相談の場

2.窓口対応に留まらない積極的なアウトリーチを行い、学生と学内学外リソースの間を埋めるコーディネーターの活用
⇛休学者や微弱なSOSを発している学生へこちらから声を掛け支援場に誘導する人材の登用

3.学生同士が支え合う居場所型共助型支援
⇛1の運営を専門的な支援者を中心に学生たちが運営するかたちの支援ができ、斜め上、或いはフラットな関係からの解決を目指せる場所を作る。

今後より、具体的な支援策について考察を深めていきたいと思います。長文にお付き合いくださりありがとうございました。

Today's BGM is
Alabama Shakes/Boys & Girls
Alabamashakes
バンド名にもあるようにアラバマ出身の新人バンドのデビュー・アルバム。野暮ったい白人の男たちのブルーアイドソウル的なレイドバックした演奏をバックに、黒人の女性であるBrittany Howardのソウルフルのボーカルが絡むんだけど、なんだろうなこの感じ。ジャニスっぽい感じもするけど、メイシー・グレイ&ウィルコっていうのが僕の印象。ちょっと演奏が手堅過ぎて深みに欠けるがセカンドではその辺を期待しつつ、見守っていきたいバンドです。

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