2010年1月11日 (月)

若年者就労支援業界とフリー その1

最近、ブログの更新頻度がガタ落ちしていますが、それは読書の時間が圧倒的に増えているせいです。読みっぱなしではなく、咀嚼して吐き出す作業をしっかりしていかないとダメだと思うので、感想やらを書いていきたいと思います。

年末に読んだのは『ロングテール』の著者、クリス・アンダーソンの最新作『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略 』。これは面白い本でした。418bv41i6jl

●無料のルール
1.デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
2.アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからもお金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう

ということですが、まあ、僕がこの本の紹介をしたとこで、それこそフリーなんで書きませんが、この本の読後感を引づりながら、ちょっと若年者就労支援業界におけるフリーと、コモディティ化について考えてみたいと思います。

コモディティ化っていうのは、僕も経営を学ぶ中で知った言葉で、ウィキペディアによると「市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとっては何処のメーカーの品を購入しても大差ない状態のこと」ということにより、「市場原理で『より安い商品』を投入するしかなくなり、結果的に製品の値段が安く なる。その結果、儲け幅が減ることもあり、企業収益を圧迫する傾向がある」ということを指します。

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全国に92ヶ所ある厚生労働省の施策「地域若者サポートステーション(以下サポステ)」は、全国のNPO法人等が委託を受け運営されている若年者就労支援施設である。

若者なら、受付さえ済ませば誰もがPCからキャリア・カウンセリングのみならず心理カウンセリングまで何度もフリー(無料)で使える就労支援施設である(施設により多少の差異とルールあり)。

彼ら若者を社会的弱者として救済するためにフリーは歓迎すべき出来事である。自己負担=自己責任という論理から言えば、フリーになったことで、コストの社会負担=社会責任に事実上なったわけである。

しかし、この場合のフリーは、ドモホルンなんとかのように、コアユーザーが購入する商品に試供品のコストが上乗せされている、購買者と非購買者が結局どちらもがユーザーである点で異なるが、クリス・アンダーソンが本書で言っているところの「三者間市場あるいは市場の二面性(ある顧客グループが別の顧客グループの費用を補う)フリー」というものである。

サポステの場合、費用を補う顧客グループとは納税者である我々である。この自覚のある市民はまずいない。無自覚な市民が若者のコストを肩代わりし、若者はサポステを無料で利用できるわけだが、若者の側にもなぜ無料で使えるのかと考えるものはまずいない。

市民の側も若者の側も、圧倒的にNPOがボランティアで運営していると思っており、給料を貰っていると知るとたいていは驚き、なかには憤慨する人もいる始末!

我々市民が若者のコストを肩代わりするインセンティブは、ひどく呆気なく言えば、非納税者が支援を受け就労することで納税者となり、個人の社会的負担が、いろんな意味で分散軽減する。ということであり、社会的投資にほかならない。

しかし、このインセンティブに対して国民的合意が得られないまま、無自覚でいることが大問題である(なんとなく最近思うのは、我々がこの国の国民であることに無自覚であること。右翼っぽいことを言っているつもりはないけど、やはりここを自覚していかないとこの国はほんとにやばいんじゃないかと思う)。

事業仕分けに於ける若者自立塾の扱いも、ここを押さえずして議論しても、まあ、ああなるなとしか思えない。今は事業仕分けにより国民的合意形成の足掛かりになったとポジティブに受け止めよう。

このサポステ・モデルが現れるまで、心理カウンセリングは心療内科等で数千〜数万円払って受けるしかなかったし、キャリア・カウンセリングなども同様のコスト負担が利用者に求められていた。

余談ばかりだが、心理カウンセリングはあまり変わらない利用層なのに対し、キャリア・カウンセリングはまったくことなる利用層が顕在化したというのが興味深い。しかしキャリア・カウンセラーのスキルは有料時代のクライアントを想定したままである点にカウンセラーたちはもっと自覚的にならなければならない。

有料だったサービスを無料にしたわけだから、地域若者サポートステーションは、これまで有料でやってきた若年者就労支援業界にとって、良くも悪くも破壊的なイノベーションであるといえる。

若年者就労支援業界をラーメン屋で例えてみよう。

あなたが一杯700円のラーメンを出していた店の横に、無料のラーメン屋ができた。しかもそのゼロ円ラーメン屋は、その代わりに餃子を500円、ビールを550円という有料メニューで経営を成り立たせているわけではなく、すべてのメニューがフリーときている!

どうやらゼロ円ラーメン屋のバックには、大金持ちの慈善家がついているらしい。

こうなったら、あなたは店を畳むか、自分たちも、大金持ちの慈善家の支援を受けフリーにするしか対抗手段はない。よって支援団体はこぞってサポステを受託した。

多くの団体がサポステを受託したことで、スキルの共有が一定程度され(ここは疑問)、ジョブトレーニングやインターンシップなど一部の団体の看板メニューだったサービスをどこでも実施するようになり、支援業界がコモディティ化した。

パブリック・サービスなのでコモディティ化してもらわないと困るわけだが、この状況から団体が独自で生き延びていく道をどのように模索していけばいいのか?

来年度5年目を迎えるこの事業では、随意契約をしていく団体とそうでない団体に分かれることが予想されるが、契約を打ちきりになった団体がどのような料金設定でこの業界で事業を継続して行くのか?

ゼロ円ラーメン屋が700円のラーメン屋に戻ったら客は離れて行くだろう。

これがサポステという破壊的イノベーションが起きた後の若年者就労支援業界の有様だと思う。ちなみにここで働く者たちの労働環境は年収200万円台である。

ラーメンをタダで食べれる客の満足感があるところにソーシャルビジネスの希望があり、落とし穴があるわけだが、今後、フリーを切り口にこの落とし穴を埋める手立てを無謀にも考えてみたいと思う。

Today's BGM is
Wilco/Being There
Wilcobeingthere こんなに美しく狂おしい音楽があるだろうか?オルタナ以降の怠惰な諦観めいた混沌とした世界からクリアなメッセージ、フレーズがくっきりとした輪郭を持って立ち上がってくる。その意志の強さみたいなものがココロを奪う。なんとか陽気に振舞おうとしている切ない音楽。もっと聴きたい人たちであるが残念ながらコレしか持っていないので誰か貸して!







Tonight nipponshu is
㈱福光屋(石川県)/悠々
Image798 唐突に始めちゃいましたが、「これは美味い!」僕はお酒を語る言葉を持っていませんので、美味いか不味いかのどちらかを書きたいと思います。これはジャケ買いです。「悠々」いいラベル、いいネーミング、不味いわけがない!おすすめ。

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